本堂脇に設けられた特設テントでは、特別護摩木(500円)と檀木奉納(5,000円)の受付がされていました。
お願いごとと氏名を書き、お不動様の知恵の炎で焼き尽くしてもらうことによって所願成就を祈願するものです。
申し込みをする参拝者の姿は絶えず、記入をするテーブルも常に満席状態。みなさまの信仰の深さがうかがえます。
当日持参した御護摩札は、こちらで僧侶の方にお渡しします。
わたしも感謝を込めて、自宅の御護摩札をお返ししてきました。
お納めした御札は、次々と「道場」と呼ばれるお焚き上げが行われる会場へと運ばれていきます。
今日御護摩札を納めてしまうということは、お正月に新しいものをお願いするまでの間、自宅には御護摩札がない状態になってしまいますよね。
わたしもちょっと不安を感じていたのですが…
そのあたりも僧侶の方がきちんと説明してくださいました。
「この柴灯大護摩でお不動様と気持ちが一体になるので大丈夫」とのことです!
10時20分、修験者(山伏姿の僧侶たち)が観音堂を出発。遠くに聞こえるホラ貝の音が、だんだんこちらへと近づいてきます。
わたしたち参拝者は胸の前で手を合わせ、修験者が道場に入ってくるのをお迎えしました。
鳴り響く太鼓の音。
「炎先達、御作法 候へ(ほのおせんだつ ごさほう そうらへ)」
掛け声とともに、修験者によって炉に点火する前のさまざまな作法が行われました。
まずは斧の作法。
護摩壇を作る作法だそうです。
次に、宝弓(ほうきゅう)の作法。
東方、南方、西方、北方、そして最後に中央の不動明王へ。
御真言を唱え、弓を放ちました。
続いて、宝剣(ほうけん)の作法。
天地一切の災いを払う儀式だそうで、掛け声とその様子はとても迫力のあるものでした。
そして、導師さまによる洒水加持(しゃすいかじ)。
清めの儀式です。
参拝者もみな胸の前で手を合わせ、お受けしました。
そしていよいよ、松明に炎が移されます。
この日の趣旨を不動明王へお伝えしたあと、「点火―!」の声が響き渡りました。
松明の炎が炉に移されると、たちまちてっぺんから煙が立ち上ります。
同時に、読経も始まりました。
大うちわであおぎ、水をかける修験者たち。
これは火を消しているわけではなく、よく燃えさかるようにするための行為なのだそうです。
たちまち一面が白い煙に包まれました。
不動明王の御真言が唱えられる中、修験者たちの手によって次々と納め札が炉の中へと投入されていきます。
目の前で一気に燃え上がる炎の様子は、迫力を感じるとともに心の奥にある何かがが鎮まっていくような気分にもなりました。
お焚き上げの最中にも、若い僧侶の手によって次々と納め札が道場へと運びこまれてきていました。
その数の多いこと…。
これらを一度に焼き尽くすのですから、大変な儀式です。
大きな炎と煙の中には、これだけたくさんの人の想いと感謝の念が込められているのですね。
読経の続く中、修験者が参拝者の方を向き「お鞄などを炎におかざし致します」と言って手を広げてくださいました。
お不動様の知恵の炎に大切なものなどをかざしてもらうことによってご利益を得る、御火加持です。
早速わたしも手にしていた鞄を差し出して、お願いしてみました。
大きな鞄や、小さな袋、財布、数珠など…参拝者たちがお願いしたものを炎にかざす修験者たち。
持ち物を差し出す人は、後を絶ちません。
わたしも1年間お守りいただいた感謝と、これからも安全に過ごせることをお不動さまに祈りました。
御火加持のあとも、納め札のお焚き上げは続きました。
参拝者がお願いごとを書いた護摩木も投入され、炎の勢いはやみません
。道場には般若心経と、繰り返される不動明王の御真言が響き渡ります。
読経を聞いていると、自然と心から余計なものが取り払われ、無になっていくのを感じました。
気が付くと写真を撮るのをやめ、強く両手を胸の前で合わせている自分がいました。
口は、不動明王の御真言を唱えています。なんとも不思議な感覚にとらわれた時間でした。
11時30分。約1時間をかけて全ての納め札を焼き尽くし、成田山新勝寺の納め札お焚き上げ柴灯大護摩供は終了しました。
ホラ貝の音とともに、山伏姿の修験者たちが道場を後にしていきます。
立派に組まれていた炉は燃えて小さくはなっていますが、存在感を残していました。
祭壇にお供えしてあった野菜やお花、道場に結界を作っていたしめ縄は、希望する参拝者へ順番に配布されました。
縁起物ということで、持ち帰る方が多いのだそうです。
この時の気温、7度。儀式の最中には寒さなど感じなかったのですが、さぁ歩こうと思ったら、
足がかじかんで固まりなかなか動くことができないことに気づきました(笑)。
でもね、しっかりとわたしも「しめ縄」の一部を頂いて帰りましたよ!
成田山新勝寺の納め札お焚き上げ「柴灯大護摩供」は、1年で最後のご縁日「納め不動」にあたる12月28日に毎年行われています。
当日は自宅や会社などにまつっていた御護摩札を手にする人や、お願いごとを護摩木に書いて祈願する人が大勢訪れていました。
さまざまな作法が行われたあとに点火された炉は、瞬く間に炎をあげ周囲を煙で包み込みます。
その迫力と読経に包まれながら、参拝者たちもお不動さまへ感謝の祈りを捧げます。
目の前で燃えさかる納め札、つづく読経に、自分の胸の奥がスッと軽くなっていくのを感じられる時間。
参加したわたしは、これは毎年行くべきだと強く思いました。
1年の締めくくりと新しい年を迎えるために最適な儀式、成田山新勝寺の納め札お焚き上げ「柴灯大護摩供」。
ぜひ、いちど行かれてみてはいかがでしょう。