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今回ご紹介するのは、江戸時代から続く歴史あるうなぎと天ぷら専門店「三はし」です。
成田駅方面から参道に入りすぐの立地で、ダイワ証券の向かいに立っている赤い旗が目印。
駅も駐車場も近いので、気軽に立ち寄りやすそうです。
外観は、昔から変わらず”そこ”にある定食屋さんといった雰囲気です。
時代を感じる瓦の庇に、深緑地の家紋入り暖簾と紺地の品書き暖簾が風情を感じさせます。
「天ぷらの三はし」という立て看板もありました。
お店のショーウインドウには食品サンプルや招き猫の置物が飾られ、醸されるレトロ感。
通りに並んだ鉢植えの花々も、控えめに参道を彩り情緒を感じさせてくれます。
重い木の引き戸を開けて店内にお邪魔すると、若い女将さんが声をかけてくれました。
この日は平日の12時頃に伺ったのですが、まだお客さんはおらず静かな様子です。
ふと見ると店内の隅にベビーカー。伺うと、女将さんのお子さんのものだそうで、現在の店主はお父様が5代目、若い女将さんが6代目になるとのことでした。お店のお手伝いの方も若女将が生まれる前から働いているそうで、家族で長年続けていらっしゃるお店でした。
店内には、可愛らしいぼんぼりなどの雑貨が飾られており、ゆったりとした和琴のBGMが空間を演出。
落ち着いた心持ちで過ごせます。
客席は、かなりゆったりとテーブルを配置。お座敷スペースが広いため、大人数での会食なども居心地がよさそうです。ベビーカーできても邪魔にならず、赤ちゃんや幼児連れで来るには、ありがたい広さ。気取らない古民家の雰囲気で、気構えずに過ごせそうな落ち着く店内です。
二階に上がる階段も昭和レトロ感漂う雰囲気。上階のお座敷に繋がっていて、宴会もできるそうです。
おすすめは、やはり「うな重(3,000円)」でしょう。
ほかにも定食があり、特にこだわりのごま油で揚げた天ぷらも人気メニューのようです。
10分程で、蓋付きのお重、それに肝吸いとお新香が提供されました。
注文してから捌くところだと1時間は待つところもあるので、次に予定がある方や待たずに参道でうなぎを楽しみたい方には、ありがたいですね。早速ワクワクしながら、お重の蓋を開けます。
焼き立てうなぎの馥郁たる香りが広がります。
目の前に現れたのは銀飯の上に並べられた、まるまる一匹のうなぎ。
タレと脂の照りが、視覚的にも食欲をそそります。
身はもちろん、背鰭や尾鰭は形がしっかりしており、焦げ目具合からも程よく焼かれていることがわかります。
提供時間が短いため、素焼きから蒸す工程がない純粋な関西風かと思いきや、背開き。
どうやら、三はしさん独自の手法で焼かれているようです。
鰻に箸を入れたところ、表面はパリッとしていますが、身はふんわりとしていました。
ひと口頂いてみると、その香りの強さに驚かされます。
うなぎの香りとタレの香り、火に焦げた香ばしさがたまりません。
タレは甘辛さのバランスが良く、うなぎにまんべんなく絡んでいます。
噛みしめるほどに、癖のないうなぎ独特の旨味が口じゅうに溢れ出てきます。
硬めに炊かれた茨城産コシヒカリのおいしさも相まって、一粒も残さず完食となりました。
魚らしい食感をたのしめるタイプの焼き具合、といいましょうか。個人的には、炭火で焼かれた背鰭としっぽのパリパリとした部分、そしてねっとりとしたゼラチン質の部分に旨味を感じました。うなぎの魅力を余すさず引き出す仕上がりとなっていて、美味しかったです。
肝吸いは強めの出汁。さっぱりした味わいながら滋味あふれる濃厚さです。
その中に、大きな肝が椀の中央で自己主張するように存在しています。
肝を頂いてみると、弾けるような弾力と臭みのなさに新鮮さを感じました。
肝からもダシが出ているはずなのに、噛めば噛むほど旨味が出てきて、肝特有の嫌な苦味がありません。
三つ葉の香りが爽やかにうなぎの脂を流してくれます。
肝吸いと一緒に添えられたお漬物も塩気が濃すぎず、口直しには丁度よいお味でした。
江戸末期からタレを継ぎ足し守り続けてきた味を、現在5代目の店主が継いでいる歴史あるお店です。うなぎの焼き方は、柔らかさやふわふわ感を楽しむ関西風寄りではなく、鰻本来の魚らしい旨味を大切にしていて、噛み締めて味わえるという点にこだわりを感じた鰻屋さんといえます。
来客は馴染みのお客様が多いそうですが、1~2割は口コミを見て訪れる外国人ゲストとか。
お正月は行列ができるときもあるようなので、予約を取るなどの注意が必要です。
駅から近いお店のため、日本を離れる前に日本の風情を感じながら鰻を味わいたいお客様も多くいらっしゃるようです。ごちそうさまでした!