時間がないとき、給料日前でお財布が心許ないとき時々お世話になるお弁当。ランチに出るよりお安いし、お腹は満ちます。
しかれども、コンビニ弁当…悪くはない。系列店のお弁当屋さん…まあまあ。スーパーマーケットのお惣菜…それなりに。
独断と偏見に満ち満ちたあまり芳しくない「お弁当」に対する総評は、「花菜」さんを知ることによりコペルニクス的転回を見せることとなりました。
成田ニュータウンの外周通りにあるお弁当屋「花菜」さんのお弁当は、食べ物が「活きた」味がするんです。それは身体も心も芯からあたためてくれます。
緑色の建物が「花菜」さん。お昼どきにしか営業していないのですが、営業時間中は常にお客さんでいっぱいです。
「花菜」さんは成田ニュータウンの外周通りにあります。びゅんと車で走ってしまうと見落としてしまうくらいつつましやかなお店なのです。
バラの茂みの奥に「弁当」と書かれたのぼりが隠れてしまっていますが、そんなところも「花菜」さんらしいといえばらしいんです。
「花菜」さんのお店の中です。お弁当がでーんと積まれています。よく見ると…あれ?ごはんの部分が空。なぜか。このあたりは「花菜」さんの愛情秘話になるので後ほどに。
お弁当を拝見。こちらは厚揚げやにんじん、大根の煮物。魚の切り身に大きなエビフライのお弁当です。
にんじん、すごく色が濃いですよね。お弁当全体の栄養価の反映のようです。
それもそのはず。スタッフさんたちが調理をするのは、その日に入ってきた新鮮な食材のみ。
そしてスタッフさんはこの地域に住まうお母さん方なのです。まさに「おふくろの味」。町内会の集まりや近辺にある小中学校からの依頼などを受けて配達もしてくださいますし、予算を酌んで作ってくださいます。
こういった営業形態はお互いの信頼関係があってこそ。地域を支え、地域に支えられて健やかな共生関係を築いていらっしゃることが伝わってきます。
あえて名付けるなら「鮭弁当」でしょうか。煮物のほかに揚げ物と大きな大きな鮭の切り身がでんと一枚。
鮭の切り身は肉厚でたっぷり脂が乗っています。お店に並ぶお弁当のメニューは固定ではなく入荷した食材次第なので、なにができあがるかその日にならないとわからないという。
そんなところも「花菜」さんをおうかがいする楽しみのひとつ。そしてお弁当のお値段はすべて500円!
とろとろの豚の角煮がメイン。味の染みた煮卵が嬉しいです。これは名付けて「豚の角煮弁当」でしょうか。
煮物は一見地味ですが、いざ作るとなるとすごく手間暇がかかるものですよね。けれど滋味と栄養価がありあまるほどある。煮物が多いのはスタッフさんたちの食べる人への愛情ゆえ。
サバの味噌煮弁当。つやつやの照りが美しいです。肉厚でジューシーな身にしっかりと味が染み込んでいるのは確実。
「花菜」さんのお弁当のおかずの特色は、丁寧に作られていることが食べて伝わってくることです。スタッフさんたちも「子どもに食べさせたい」お弁当を作っていらっしゃるはず。おかずの栄養価のバランスが一見して取れていますよね。
そしてこれがエビフライ弁当の完成形です。肉団子やシュウマイ、お新香に春雨のサラダが付きます。
特記すべきはごはん。注文が決まってから、あたたかい状態のご飯を詰めてくださるんですよ!レンチンではないあったかごはんがお弁当で食べられるなんて、しみじみ嬉しいですよね。そのあたたかいごはんのお米がつやりとしてふっくらしていて、甘くて美味しいのです。
お赤飯だー!お米がふっくらつやつやで、炊かれた小豆もしっかりしていて胡麻がいっぱいです。
実にパーフェクトなお赤飯です。お赤飯を単品で売り出してもきっと売れるクォリティ。
ほかほか白米を盛っていただいて完成。角煮につけるからしの小袋が添えられているのが心憎いです。
「花菜」さんの店頭に並ぶお弁当は、二重の意味であたたかかったです。
購入後にあたたかいごはんを詰めて下さるお心遣い。下ごしらえがきっちりとなされて下味がしっかりとついた栄養価の高い野菜やお肉やお魚の、「活きた」あたたかい味。素材が「我こそは野菜なり」などと堂々と舌の上で主張します。
妙な添加物なんてまったく使われていないから、味がぼやけていないのです。「花菜」さんのお弁当は、お腹ばかりか心もきっちり満たしてあたたかくしてくださいました。