ときどき、ふっと思い出すお店ってありませんか?そのお店で食べた料理やその味や、お店の雰囲気と共に作って下さった店主さんの笑顔や声と共に思い出すような、そんなお店。
思い出すと無性にそこの料理が食べたくなるお店。
「懐かしいな」、「また行きたいな」と想うお店。「帰りたいな」と思うお店。きっとそのお店で食べたご飯の味はお母さんが作ってくれたぬくもりの宿るご飯に近い味がして、その料理を提供してくださった方の笑顔も声も活き活きしていたはず。
すべてにおいてあたたかかったはず。成田市飯田町にある「秀月食堂」さんは、そんな素敵なお店でした。
成田市民病院の近くにある「秀月食堂」さんの入り口です。
のれんがいい味出してます。お店の前にある駐車スペースには4台ほど停められます。
こぢんまりとしつつも清潔な、そしてどこか懐かしい雰囲気の店内。
お店はとっても気さくで笑顔の素敵なおかみさんがおひとりで切り盛りなさっていらっしゃいます。
お席は4人がけテーブルが4つ、2人がけテーブルが2つあります。
ご家族でご来店しても、おひとりでふらりと来店してもおかみさんがあたたかく迎えて下さいます。
とんかつ定食からメンチカツ定食、アジフライ定食…。定食屋さんならばおよそ思い浮かべられる定食を見事に網羅してくださっています。カツ丼やカレーライスなどのご飯もの、麺類は肉そばや焼うどんなどもあります。
驚くべきはそのお値段。うどんやそばはワンコインあれば食べられます…!
お店一番人気のチキンかつ定食ですら630円(取材時)なんですよ!常連さんがたくさん来店なさっているのも納得です。
ハムカツ、ポテトサラダ、マカロニサラダ、玉子焼き、おひたし…。
栄養バランスのよさそうな一品料理ズ。そして家庭のテーブルに乗っていた手料理のような品々でもあります。
良心的過ぎるお値段にもおふくろ的な深い愛情を感じます。
チキンカツ定食をお願いしました。このボリューム…「どどん」、という感じですよね!
白米なり。こんもりと盛られてます。白くそびえる山の如し。このボリュームで普通盛りなんです。
お米はふっくら艶やかで、噛み締めるとほのかに甘かったです。
かといって魚沼産コシヒカリとかそういったブランド米が使用されているとかではなく普通のお米なのですが、甘い。
なぜか?きっと、「秀月食堂」さんで長年培われてきた「炊く技術」だと思うんです。
大勢のハラヘリたちを救済しようというおかみさんの慈悲によってなされる技です。
それプラスおかみさんの「たんとおあがり!」という思いやり的な感情が無銘のお米を甘く感じさせている。
錯覚ではなく、きっとそうです。そしてお味噌汁にもたっぷりのお野菜が。こういったご配慮も嬉しいです。
大振りの鶏むね肉を2枚も使ったチキンカツです。ザクザクの衣の中の鶏肉は驚くほどジューシーで、からりと軽やかに揚げられています。家庭的な雰囲気の「秀月食堂」さんですが、調理の腕はやはりプロ。
なのに、どこか懐かしい味がします。食べると心も胃袋もホッコリするような優しい味もします。飾りないのにシンプルに美味しい。
やわらかなチキンカツ。この通りとっても肉厚です。しみじみ美味しい。
「スイカ食べられる?」「はい」というなにげないやりとりの後、ほいっとばかりに下さったすいかです。
おかみさんはすべてのお客さんに笑顔でサービスなさっていらっしゃいました。
こういうサプライズ的なご配慮ってじぃんとしちゃいますよね。やさしい甘さが胃の腑と心にじんわりと沁みました。
「秀月食堂」さんにうかがってから、「帰りたい店」がひとつ増えた感じです。
提供される料理はすべてあたたかく、その味もあたたかく、「人はなぜ食べるのか」という根源的な問いに答えを頂いた感じです。
なぜ食べるのか?それは栄養補給のみにあらず。食べることによって食の恵みと、作り手のぬくもりを感じるために食べるのだと。
その確証を得られたのは、世話好きで愛情深いおふくろ的なおかみさんの存在によるものが大きいです。
湯気が立つほどあたたかく、そして、心がほっこりしてしまうほどに思いやりのこもったご飯を頂きました。
有形無形のあたたかなものを、本当にごちそうさまでした。