お正月には花びら餅、桜の頃には桜餅、端午の節句には柏餅やちまき、お彼岸にはぼたもちやおはぎ、十五夜にはお月見団子、栗が実る頃には栗むし羊羹など。
様々な年中行事と和菓子は密接に結びついており、そしてその時期に頂く和菓子には味にも見目にもその季節が詰め込まれています。
本日お邪魔した「日乃出庵」さんはここ成田で何十年と和菓子を作り続けていらっしゃる老舗の和菓子屋さんです。
成田に寄り添い、成田の季節を見つめ続けてきた和菓子屋さんでもあります。
そんな由緒あるお店に、季節を切り取って手のひらサイズに詰め込んだような和菓子を求めて訪れてみるのも風流ですよね。
成田赤十字病院にほど近い場所にある「日乃出庵」さんの店舗外観です。
駐車スペースもあります。和菓子屋さんに相応しい落ち着きと趣ある外観です。
白地に力強い墨書テイストの店名が書かれた看板が目印です。
「日乃出庵」さんの店内風景とご主人のお姿。「温故知新」の文字がいい味を出しています。
和菓子はいわば先人から継承した知恵のようなものであり、それを踏まえて今の時代に添う和菓子を探求したり、逆に譲れないところは気高い意志で遵守する。
「温故知新」という言葉の意味も「日乃出庵」さんの在り方にぴったりな気がします。
どら焼や最中、かぼちゃまんじゅうに利休まんじゅうなどがずらりと並びます。
奇をてらった主張の強い華やかなお饅頭ではなく、素朴で堅実な印象を受けるラインナップです。
万人に好かれ愛される「ハズレ」のない素朴な和菓子こそ、ストレートに素材や地力が勝負となるので作るのが難しいはず。
「日乃出庵」さんの和菓子が何十年も愛されている秘密は、きっと「温故知新」の精神にあるのでしょう。
お値段が良心的なところも嬉しいポイントです。ついいくつも買いたくなります。
ひとつひとつのお饅頭を大切につつむ包み紙などもきれいで目に楽しいです。
お赤飯や紅白まんじゅうなどの慶事に用いられる和菓子と、弔事に用いられる青白まんじゅうの菓子折りです。
和菓子屋さんのお赤飯ってもっちり具合が絶妙で、すごく美味しいですよね。
黒ごま最中です。半分に割れるようになっています。
さっくりとした皮から覗く濡れたような黒色が印象的な黒ごまあんはほどよい甘さで舌触りもしっとりと滑らか。
ごまの香ばしさがアクセントになって、品のいいあんの味わいに奥行きを与えています。3つくらいぺろっと食べられそうな逸品です。
端正な円形を成す枝豆まんじゅう(右)、梅まんじゅう(左)です。薄皮からほのかにうかがえる薄緑や桃色が匂やかで美しいです。
薄皮なのに、皮がもっちりとしています。枝豆のほうには控えめな甘さの枝豆あんがぎっしりと包まれ、ひとつ食べると充足感を感じます。梅のほうは白あんの中に瑞々しい梅が丸ごとひとつ包まれています。
梅のし酸味と白あんの品のいい甘さが妙なる調和を奏でる和菓子です。
栗まんじゅうです。大粒の栗を戴いたおまんじゅうの中には、白あんがぎっしりと包み込まれています。
栗を楽しむおまんじゅうでもあり、おまんじゅう全体が栗を引き立てている設計になっているという奥深い趣向が凝らされた贅沢なひと品です。
上品な包みが秋の実りの豊穣を端的に表現しているような感じを受けます。おもたせにしたら喜ばれそうです。
粒栗です。皮の中には白あん、控えめな甘さの白あんの中に大きな栗がひと粒包まれています。こちらも栗を楽しむひと品です。
小ぶりなサイズのおまんじゅうですが、ひとつ頬張れば底知れない満足感を感じることが出来ます。
「日乃出庵」さんに伺わせていただき和菓子をいただくと、「三世代向き」という言葉が頭をよぎりました。
和菓子は洋菓子と違い「ひとりで食べる」シチュエーションが(よほどの和菓子好きならばともかく)思い浮かばなかったのです。
ひとりではなく「誰か」と囲んで食べるもの。それが和菓子だな、と。
それは家族とであったり、気心の知れた茶飲み友達であったりと人それぞれだと思います。
「温故知新」の信念を遵守する、みんなで囲むあたたかい味の和菓子をご提供下さる「日乃出庵」さんの和菓子は、大切な誰かと一緒に食べるのにぴったりな品ばかりでした。